
男性不妊に有効な成分を調べていたら、「カルニチン」という成分が有効と出てきたけれど、本当に効くの?と思っている方向けに、専門家がカルニチンの有効性について詳しくご紹介いたします。
目次
A.カルニチンは男性不妊に効果があるという研究報告があります。
近年の研究で、精子の質や量が良くない患者さんでは、精漿(精子の液体成分)内のカルニチン濃度が低いということが分かってきました。さらに、カルニチンを摂取することによって、精子の質や量が改善したという研究報告もあります。
カルニチンは動物性食品に多く含まれているのでこれらの食品の摂取をすることで、体内のカルニチンの量を増やせる可能性があります。食品での摂取が難しい方はサプリメントでの摂取もいいでしょう。ただし、用法用量は自己判断で変更せず、もし変更したい場合には医師に相談することをおすすめします。
カルニチンってどんなもの?
カルニチンとはアミノ酸から作られる物質で、体のほぼすべての細胞に存在します。細胞の中で、カルニチンは脂肪酸をミトコンドリアへと運ぶ役割を担っています。ミトコンドリア内ではこの脂肪酸を代謝し、エネルギーとして活用します。さらにカルニチンはミトコンドリア内にある有害物質を外に運び出し、ミトコンドリア内に老廃物が溜まらないようにしてくれます。
このように、カルニチンは脂肪酸を代謝してくれるので、最近はダイエットサプリとして特に注目されています。しかし、後で詳しくご紹介しますが、男性不妊にも効果があるのではないかと言われています。
カルニチンは構造の違いによってL-カルニチンとD-カルニチンがありますが、このうちL-カルニチンのみが体の中で働くことができます。
食べ物では赤身の肉や魚、鶏肉、牛乳などの動物性食品に多く含まれており、野菜にはあまり含まれていません。また、人の体は自分でカルニチンを作り出すこともできます。
カルニチンが少ないとどんな影響があるの?
人が年齢を重ねると、食事の量が減ってカルニチンの摂取量が減ったり、体内でカルニチンをうまく合成出来なくなったりします。
そのため、体内のカルニチンの量は年齢を重ねると減っていってしまいます。
また、最近はダイエットブームもあり、食事量の減少や偏食によって、若い方でもカルニチンが不足しやすくなっています。
カルニチンが減少すると、脂肪酸がうまく代謝できないこともありますが、ミトコンドリア内の老廃物を外に運び出せなくなり、ミトコンドリアも壊れやすくなってしまいます。
近年の研究で、ミトコンドリアが人間の老化を決めているという報告もありますので、カルニチンの減少が老化の一因になるのかもしれません。
カルニチンは男性不妊にどんな効果があるの?
カルニチンは、精子の数や運動率の改善に効果があると言われています。
精液のうち、液体部分を「精漿(せいしょう)」と言いますが、
・乏精子症(精子が少ない)
・精子無力症(精子の運動率が悪い)
・奇形精子症(正常な形態の精子が少ない)
といった患者さんでは、この精漿内のカルニチンの量が少ないという報告があります。
カルニチン1日2~3gの補給を3~4か月行うことで精子の質が改善されたという報告や、男性不妊の患者さんが1日2gのカルニチンを2か月間とると、精子濃度や精子の運動率が改善したという報告が複数見られました。
イタリアでは、精子無力症の20~40歳の男性60人を2つのグループに分け、一方にはL-カルニチン(1日2g)とアセチル-L-カルニチン(1日1g)を投与、もう一方には偽薬(有効成分が入っていない薬)を投与し6か月過ごさせた研究があります。この研究ではカルニチンを服用した30人で精子濃度や運動率が明らかに改善しました。さらに、この研究中に、カルニチンを服用した30人のうち4人が自然妊娠に至ったそうです。
ちなみにアセチル-L-カルニチンとは、L-カルニチンに、少し成分を加えたもので、L-カルニチンよりも体への吸収が良いと言われています。
まだ研究が始まったばかりで被験者が少ないという心配はありますが、カルニチンで精子の質や量が改善する可能性を感じさせる論文です。
また、勃起不全(ED)の患者さんにプロピオニル-L-カルニチン(L-カルニチンに脂肪酸をくっつけたもの)、L-アルギニン、ナイアシンという3つの成分を含むサプリメントを摂取させたところ、40%の患者さんでEDが改善したという報告もあります。こちらの研究はカルニチン以外の成分も入っているので100%カルニチンの影響とは言えない部分もありますが、もしかするとL-カルニチンはED改善にも効果があるのかもしれません。
体内のカルニチンを増やすにはどうしたらいいの?
カルニチンは先ほどもご紹介したように、赤身の肉や魚、鶏肉、牛乳に多く含まれています。ですから、これらの食品を積極的に摂るようにしましょう。
食が細い方や、カルニチンを多く含む食品が苦手な場合は、サプリメントでの摂取も検討してはいかがでしょうか。
ただし、各メーカーで出しているサプリメントの1日量の目安は、ご紹介した研究で摂取していた量に比べて少なくなっているので、急激な改善はみられないかもしれません。
だからと言って、過剰に服用してしまうと、嘔吐や吐き気、下痢、心筋梗塞などの心血管疾患のリスク上昇という副作用も報告されています。
ですから、自己判断で用法用量を変えるのではなく、摂取量を増やしたい場合はかかりつけの医師に相談してからにしてくださいね。
まとめ
①カルニチンはミトコンドリアに脂肪酸を運んだり、ミトコンドリア内の有害物質を外に運び出したりしてくれます。
ミトコンドリアは近年老化に関与しているとも言われていますので、体内のカルニチンが減少すると老化が進む一因になる可能性があります。
②カルニチンによって精子の質や量が改善する可能性があります。
男性不妊の患者さんでは精漿内のカルニチンの量が少ないという研究報告があります。また、カルニチンを摂取した患者さんでは精子の量や質が改善したという報告が複数存在しています。さらに、ED患者さんにカルニチンや他の成分を含んだサプリメントを投与したところ、40%の患者さんでEDが改善したという報告もあり、様々な男性不妊に効果が期待できます。
③カルニチンは動物性食品に多く含まれます。
カルニチンは赤身の肉や鶏肉、魚や牛乳などの動物性食品に多く含まれます。これらの食品を積極的に摂取することで、体内のカルニチンの量を増やす効果を期待できます。
サプリメントでも摂取できますが、サプリメントは用法用量を自己判断で変えないようにしましょう。