代表的な男性不妊の原因

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男性不妊症は、精子の生成から射精をし、受精するまでの間に何らかの問題が起こる事によって生じます。

自身で異常を認識できるものから、検査をしないとわからないものなど様々な種類があります。

その種類は問題が生じる場所によってわけられていて、

  • 造精機能障害(ぞうせいきのうしょうがい)
  • 精路通過障害(せいろつうかしょうがい)
  • 性機能障害(せいきのうしょうがい)

があります。
ここでは、男性不妊症の要因とされている原因についてご紹介します。

造精機能障害

造精機能障害とは

精子を作る機能に起こる問題や障害をまとめて造精機能障害といいます。
造精機能障害であるとその結果、精子の数が少ない『乏精子症』、精子が全く見られない『無精子症』、運動している精子の割合が低くなる『精子無力症』などになります。
造精機能障害は現在男性不妊の原因として最も多く、70~90%をしめているといわれています。

造精機能障害の原因

原因については、

  • 突発性で原因不明
  • 精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)
  • その他

があります。
現状、突発性で原因不明のものが大きい割合をしめています。また、原因が判明しているものの中で最も高い割合をしめるのが精索静脈瘤です。検査機関によって数値は異なりますが、エスセットクリニックにおいては、男性不妊の患者様の40%ほどが検査によって精索静脈瘤が見つかっています。

残りは割合的には高くはありませんが、クラインフェルター症候群などの染色体異常(多くの場合無精子症になります)、停留精巣、精巣炎、脳から分泌されるホルモンの異常による精子の形成障害などがあります。

 造精機能障害の治療

治療法に関しては、薬、サプリメントによって精子の形成に必要な栄養素を補充する、抗酸化作用のある成分を摂取する等の薬物療法か、精子形成に障害を与えていると考えられる要因を取り除く手術療法、ホルモン療法があります。

造精機能障害の原因によって治療方法は異なりますが、精索静脈瘤の場合、事前の検査によって精子形成にどの程度影響を与えているかを考え、薬物療法を行うか手術を行うかどうかを判断します。
精索静脈瘤の程度が低い場合などには別の要素が原因と考えられ手術の適応とはなりません。この判断は自身でおこなえるものではありませんので、医療機関の受診が必須となります。
基本的に造精機能障害において治療方法という手段で手術が行われるのは精索静脈瘤の場合のみとなっています。

突発性で原因不明の場合は、薬物療法(ビタミン剤や漢方製剤、抗酸化剤など)で精子の状態の改善を試み、経過を観察したのち対応方法を検討する流れになります。
仮に原因が不明で根治が難しい場合であっても、治療を継続していくことで精子所見が改善していき、顕微授精しかなかったものが人工授精を検討できるようになったりなど奥様の不妊治療の負担を軽減することにつながったり、結果的に経済的負担を軽減することにもなりえます。

ホルモン分泌異常が原因と考えられる場合には、ホルモン剤の注射の有効性が認められています。

染色体異常によって、造精機能障害(無精子症)となってしまっているケースにおいては、現状精子を出現させる治療法がなく、TESEによって精巣内から直接精子を回収し顕微授精などに利用する方法が子供を授かる事の出来る唯一の手段となっています。

精路通過障害

精子を作る機能には問題がなく、精子を運ぶ過程の通路(精管、精巣上体)に問題があると精路通過障害と診断されます。他の男性不妊要因同様、自覚症状がない事が多く、検査をしてみてはじめてわかる事がおおくなっています。
精子が通過する路が遮断されてしまっている状態になりますので、無精子症となるケースも多くみられます。

このように精子が運ぶ過程の通路が遮断されて無精子症になる事を閉塞性無精子症といいます。

精路通過障害の原因

精路通過障害の原因には先天性のもの、後天性のものがあり

先天性の場合には、「先天性両側精管欠損症(CBAVD)」、後天性には、尿道炎や外傷、射精管閉塞症、前立腺嚢胞、小児期両側鼡径(そけい)ヘルニア術後、などが原因として考えられます。後天的な物にはその他の原因や、原因不明のものも多々あります。

原因 詳細
先天性精管欠損症 先天性精管欠損症は、生まれつき精管が形成されないという症状です。
尿道炎 尿道口から膿が出たりします。尿道口から侵入した病原菌が尿道の粘膜に感染するのが原因です。
前立腺嚢胞 排尿障害の原因となります。
鼡径(そけい)ヘルニア 本来ならお腹の中にあるはずの「腹膜」や「腸」の一部が、鼠径(そけい)部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる病気です。

精路通過障害の治療

精路通過障害の不妊の観点における治療は大きく分けて二つあり、

  • 精路を再建することで射出精液中に精子が出現することを期待する方法
  • 精路再建をおこなわず精巣内又は精巣上体から直接精子を回収し不妊治療に使用する方法

があります。
精子が正常に作られている場合、精子の通り道を再建することで、男性不妊の治療をすることができます。
精路再建は比較的成績がよいとされ、術後精液中に精液が見られるようになる場合があります。手術によって精子が出るようになれば自然妊娠を期待することも可能となります。

ただ、閉塞期間が長いと再建がうまくいかなかったり、再建しても精子がみられる可能性が下がってしまう事が報告されおり、すべての事例において精路再建が有効な手段とはいえません。
精路再建をしても精子出現の見込みが低い人や、不妊治療の時間的余裕があまり残されていない、不妊治療を急ぎたい等の場合には、精路再建をおこなわず精巣や精巣上体から直接精子を回収するTESE がおこなわれることがあります。

精路通過障害を治療する場合、女性の年齢や不妊原因の有無などもふまえて、医師に相談するようにするとよいでしょう。