
乏精子症と診断されたら、一般的には生活習慣の改善やホルモン療法、抗酸化療法、漢方で治療をします。精索静脈瘤の認められる人に外科手術をしたら、乏精子症の改善が認められたという報告もあります。
現在のところ原因不明の乏精子症には、確立された治療法というものはまだありません。
同じ治療をして改善する人もいれば、改善しない人もいて、3~6ヶ月試して改善が認められない場合は、他の治療を試すことを検討することがあります。
ひとつの治療をして改善しなくても、諦めずにさまざまな治療を試す粘り強さが男性不妊治療には必要です。改善が難しい場合には、治療と並行して人工授精や体外受精、顕微授精を勧められることもあります。
目次
1.乏精子症とは基準値よりも精子の数が少ないことです
2.乏精子症は生活習慣を見直すことで改善することもあります
3.乏精子症は一般的には抗酸化療法やホルモン療法、漢方薬などで治療します
4.精子の量についてのQ&A
5.(まとめ)精子が少ない(乏精子症)と診断されてしまったら?
目次
乏精子症とは基準値よりも精子の数が少ないことです
乏精子症は造精機能障害のひとつで、基準値よりも精子の数が少ないことをいいます。
WHOは精液検査における基準値を以下のように設定しました。
精液検査の正常値
検査項目 | 下限基準値 |
精液量 | 1.5ml以上 |
pH | 7.2以上 |
精子濃度 | 1,500万/ml以上 |
総精子数 | 3,900万以上(1回の射精で) |
前進運動率 | 32%以上 |
総運動率 | 40%以上 |
正常精子形態率 | 4%以上 |
白血球数 | 100万/ml未満 |
(WHOラボマニュアルーヒト精液検査と手技)
乏精子症の定義は、精子数が1,500万/ml未満、総精子数3,900万未満です。
乏精子症は、ホルモン分泌異常や精索静脈瘤など原因がわかる場合もありますが、半数以上は原因不明といわれています。
乏精子症で自然妊娠が難しい場合は、人工授精を検討することになります。しかし、調整後の総精子数が100~500万に満たない場合は人工授精も難しいとされているため、顕微授精を勧めてくるクリニックが多いようです。
乏精子症は生活習慣を見直すことで改善することもある
乏精子症は、現在はまだ確実に改善するという治療法はありません。しかし、精子は非常に繊細でストレスや生活習慣の影響を受けやすいと考えられており、軽度の乏精子症は生活習慣を見直すだけで改善したという報告があります。
ストレスを溜め込まない生活やバランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠などは、精子の状態の改善に良いとされています。
乏精子症と診断され方の中には、ひとりで悩みこんでしまう方がいるかもしれません。しかし、それではストレスが溜まり精子の質の低下を招いてしまうかもしれません。ひとりで悩まずに、妻や医師とよく話し合いながら前向きに不妊治療に取り組んだ方が、良い結果につながる可能性が高いでしょう。
乏精子症は一般的には抗酸化療法やホルモン療法、漢方薬などで治療します
原因不明の乏精子症の治療には、漢方薬や抗酸化療法などが試されます。
酸化ストレスが、精子を作る機能に対して障害を引き起こしている可能性があるという報告があります。そのため、生活習慣を見直して活性酸素の過剰な発生を抑制すると同時に、抗酸化サプリメントを摂取して抗酸化力を高める治療が行われています。
ホルモン分泌異常が原因で、精子産生機能を障害している場合に行われているのは、ホルモン療法です。卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの分泌を促進するクロミフェンなどが用いられています。卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンは、精巣に作用し男性ホルモンの分泌を増やして、精子の産生を促進させる効果が期待できると考えられています。
手術適応の精索静脈瘤が認められる人は、外科手術を行うと改善することがみられます。(改善の割合は6割~7割程度といわれています)これは、精索静脈瘤により精巣の周りに血液が停滞して、精巣の温度の上昇を引き起こし、精子の生産に影響を及ぼしていると考えられています。
精子の量についてのQ&A
Q:無精子といわれました。どうしたらよいのでしょうか?
無精子症は、精子が全く作られていないないし作られているが生産する能力が低下して精液中に精子を認められない(非閉塞性無精子症)場合と、精子は作られているが通路が塞がれているため、精液中に精子が認められない(閉塞性無精子症)があります。
検査をしてどちらのタイプか調べてもらい、それに応じた治療を受けることになります。
Q:無精子でも妊娠の手段はありますか?
精子が作られている閉塞性無精子症の方は、通路を開通させる手術をして精液中に精子が出現することを目指します。また、手術をしても精液中に精子が認められなかった場合でも、精巣から精子を直接回収して顕微授精で妊娠できる可能性があります。
非閉塞性無精子症でも精子が少しでも作られている方なら、精巣から精子を直接回収することで、顕微授精で妊娠できる可能性はあります。
Q:精液の量が少ない気がします。どうすれば改善しますか?
精液量は、ストレスや疲労、栄養、加齢などが影響します。過度な肉体的疲労やストレスが掛からない生活を心掛け、亜鉛や食物繊維、アルギニンを含む食べ物を中心にバランスの取れた食生活を送るように心がけましょう。
Q:精液が出ません。治療すれば治りますか?
精液が膀胱に逆流してしまう逆行性射精の可能性があります。プソイドエフィドリンやイミプラミンなどを服用する治療が行われています。まずは、原因を調べるために近くのクリニックで検査を受けることをおすすめします。
(まとめ) 精子が少ない(乏精子症)と診断されてしまったら?
1. 生活習慣の改善やホルモン療法、抗酸化療法、漢方、ケースによっては外科手術で改善を図ります
生活習慣の改善やホルモン療法、抗酸化療法などで改善を図ります。精索静脈瘤が認められる場合は、外科手術をすると改善が認められたという報告があります。
精子を増やすための確立された治療はまだなく、それぞれの治療はひとによって効果は異なるため、いくつかの治療を試すことをおすすめします。
2.乏精子症とは基準値よりも精子の数が少ないことです
乏精子症とは、基準値よりも精子数が少ないことをいいます。精子数が1,500万/ml未満、総精子数3,900万未満です。
原因がわかる場合もありますが、約半数は原因不明という報告があります。
3.乏精子症は生活習慣を見直すことで改善することもあります
精子はストレスや生活習慣の影響を受けやすく、軽度の乏精子症は、生活習慣を見直すだけで改善したという報告があります。
ストレスを溜め込まない生活やバランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠などを心がけましょう。
4.乏精子症は一般的には抗酸化療法やホルモン療法、漢方薬などで治療します
酸化ストレスが精子の産生機能に影響を及ぼしているという報告があるため、生活習慣を見直すと同時に、抗酸化サプリメントを摂取して抗酸化力を高める治療が行われています。
ホルモン分泌異常が原因の人はホルモン療法、精索静脈瘤が認められる人は外科手術を行うと乏精子症が改善される可能性があります。