精索静脈瘤の術式について

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精索静脈瘤手術にはどのような術式がありますか?

 

精索静脈瘤手術の術式には、高位結紮術・低位結紮術があります。

 

鼠径管より上部で切断するのが高位結紮術で、鼠径管より下で切断するのが低位結紮術です。両術式に共通しているのは、血液が逆流している内精索静脈を糸で縛った上で切断することです。精巣から心臓に戻る静脈は他にもあるので内精索静脈を結紮してしまっても問題ありません。

以前はカテーテルを用いた血管閉塞術で治療するクリニックもあったそうですが、再発率が高いので現在は行われることは少なくなっています。

精索静脈瘤は男性不妊の原因の約40%を占めています

精巣から心臓に戻る静脈の血液が逆流することで、静脈が拡張し瘤ができてしまった状態を精索静脈瘤といいます。男性の約15%に見られ、精索静脈瘤があっても自然妊娠する方も多数います。自覚症状がないことも多く男性不妊の検査で初めて見つかるケースが多いです。

精索静脈瘤が男性不妊の原因となる理由ははっきりとはわかっていません。血液逆流による酸化ストレスや精巣温度上昇で精巣機能がダメージを受けるため、造精機能障害を引き起こすと考えている方もいるようです。

精索静脈瘤は外科手術で治療しますが、放置していると症状が進行して精巣のダメージが大きくなってしまいます。治療後精子の状態が回復してくるまで時間がかかることもあるため、早期発見・早期治療が重要となってきます。

自覚症状がない人が多いため自分では気づきにくいですが、左右の精巣サイズに差がある方、陰嚢の表面が凸凹しているなどの方は精索静脈瘤の検査を受けることをおすすめします。

手術を受けた人の約60%が精液の質の改善が認められたという報告がありますが、改善するまでには手術を受けてから3ヶ月以上かかるため、他の男性不妊治療も並行して行うことをすすめるクリニックもあります。

 

精索静脈瘤の分類

グレード 状態
グレード1 立位腹圧負荷ではじめて静脈怒張を触知できる
グレード2 立位で触り、確認できる
グレード3 視診で静脈瘤を確認できる

グレードが高いほど精索静脈瘤が進行している状態です。

 

 

精索静脈瘤高位結紮術は患者の負担が大きい術式です

技術的に容易で比較的経験の浅い医師も行え、手術時間も短い術式ですが低位結紮術と比較すると負担が大きい術式といえます。

腹部を切開して筋肉を分け入って精索静脈に到達し結紮するため、筋肉のダメージが大きく、術後3週間程度は腹筋を使った運動は控えなければいけません。全身麻酔をするため3~4日の入院が必要となることが多いです。

動脈やリンパ管の温存も難しいとされていて、低位結紮術に比べると陰嚢水腫発生率、精索静脈瘤再発率が高い術式です。

顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術は、再発率が低い術式です

顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術は、精索静脈瘤治療で現在主流となっている術式です。局所麻酔で行えるため、患者の負担が小さく入院せずに手術当日に帰宅することができます。

高位結紮術では難しかった、リンパ管と動脈を温存することができるため、陰嚢水腫の発生率や精索静脈瘤の再発率が低いです。精索静脈瘤の再発をさらに下げるために、外精静脈も結紮した方が良いと考えられているのですが、顕微鏡下でこれを行うには高い技術が必要となるため、一部の病院を除いては外精静脈の結紮までは行っていないようです。

手術用顕微鏡を使っての手術には経験が必要となります。技量の個人差がそのまま術後経過に影響を及ぼすので、経験があり技術の高い医師を探して執刀してもらうことが最善でしょう。

全てのリンパ管・動脈を温存できない低位結紮術も行われています

経験の浅い医師が顕微鏡下精索静脈低位結紮術を行うと、全てのリンパ管・動脈の温存ができず、精管と動脈を1本ずつ温存しただけで、他の動脈・リンパ管・精管を静脈と一緒に結紮してしまっていることがあるといわれています。この方法だと血流障害やリンパ浮腫、精索静脈瘤の再発率が高くなってしまう可能性があります。

しかし、日本には顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術を行うのに、十分な経験と技術をもっている泌尿器科医はあまり多いとは言えないため、医師の育成が課題のひとつでしょう。

低位結紮術の方が高位結紮術よりメリットが多い術式です

高位結紮術は保険診療でおこなうことができる、医師の技術差に左右されにくい、という以外のメリットはほとんどありません。そのため、現在も高位結紮術を行っている病院もありますが、低位結紮術をメインに行う病院が増えています。

顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術のメリット

・陰嚢水腫発生率、精索静脈瘤の再発率が低い

・痛みが少ない

・局所麻酔で行えるため、患者の負担が小さく日帰りで手術できる

・動脈とリンパ管を温存し、精索静脈だけの結紮が可能

顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術のデメリット

・医師の技術差が術後経過に影響する

・高位結紮術よりも手術時間が長い

 

(まとめ)精索静脈瘤手術にはどのような術式がありますか?

精索静脈瘤手術の術式には、高位結紮術と低位結紮術があります

鼠径管より上部で切断するのが高位結紮術で、鼠径管より下で切断するのが低位結紮術です。両術式とも、内精索静脈を糸で縛った上に切断します。

精索静脈瘤は男性不妊の原因の約40%を占めています

精巣から心臓に戻る静脈の血液が逆流することで、静脈が拡張し瘤ができてしまった状態を精索静脈瘤といいます。

精索静脈瘤が男性不妊の原因となる理由ははっきりとはわかっていません。血液逆流による酸化ストレスや精巣温度上昇で精巣機能がダメージを受けるため、造精機能障害を引き起こすと考えています。

精索静脈瘤高位結紮術は患者の負担がやや大きい術式です

全身麻酔をするため3~4日の入院が必要になり、筋肉のダメージも大きいため術後3週間程度は腹筋を使った運動は控えなければいけません。

動脈・リンパ管の温存は難しく、陰嚢水腫発生率、精索静脈瘤再発率が低位結紮術に比べると高いです。

顕微鏡下精索静脈瘤低位傑作術は、再発率が低い術式です

局所麻酔で手術を行うことができるため、日帰り手術もできます。動脈・リンパ管の温存が可能のため、陰嚢水腫発生率、精索静脈瘤再発率が高位結紮術に比べると低いです。

手術用顕微鏡を使っての手術には技術が必要になるため、医師の技術が術後経過に影響を及ぼします。

全てのリンパ管・動脈を温存できない低位結紮術も行われてます

全てのリンパ管・動脈を温存して、丁寧に全ての精巣静脈瘤が見られる静脈を結紮するには高い技術が必要です。精管と動脈を1本ずつ温存しただけで、他の動脈・リンパ管・精管を静脈と一緒に結紮してしまうと、血流障害やリンパ浮腫、精索静脈瘤の再発率が高くなってしまう可能性があります。

低位結紮術の方が高位結紮術よりもメリットが多い術式です

陰嚢水腫発生率と精索静脈瘤の再発率が低い、動脈とリンパ管の温存が可能、患者負担が小さいなどのメリットがあります。