精子について

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精子については、量や運動については知っていられる方もいるかと思います。
言葉は知っていても精子についてよく知らないという方もいらっしゃると思いますので、ここでは意外に知られていない精子について紹介させていただきます。

精子の構造について

精子は陰嚢(いんのう)の中にある精巣で作られる生殖細胞(せいしょくさいぼう)で下図のような構造をしています。大きく分けて、頭部、中間部、尾部の3部分にわけられます。

 

精子の頭部

精子の頭部にはDNA情報、遺伝情報が入っています。

あまり知られていませんが、射精された精子の中には、頭部に入っているDNAが破損、切断されているものが多く含まれています。(含まれている度合いは個人差が大きくあります)

このDNAが破損、切断されている精子は受精しにくいなどの問題が生じ、妊娠したとしても流産の可能性を上げてしまう危険因子となることがわかっています。通常の精子検査では検査されない要素にはなりますが、是非知っておいてほしいポイントです。
破損の原因としては精子に対する酸化ストレス(活性酸素)、加齢による質の低下などが考えられています。

『活性酸素とは、簡単に言ってしまえば酸素が反応しやすくなった状態で、この活性酸素は過剰に存在してしまうと細胞のDNAに損傷を与える事が知られています。通常DNAが損傷した場合、DNAは修復されますが精子にはDNAを修復する酵素が存在しないので壊れたままになります。このような理由で精子は酸化ストレスに弱いとされています。精子の質において酸化ストレスは非常に重要なキーワードです。』

また、頭部の形に異常がある精子は奇形精子とよばれ、この奇形精子の割合が高いと不妊の原因となりえることから重要な検査項目とされます。

中間部

中間部にはミトコンドリアが入っていて、このミトコンドリアからエネルギーが供給されることによって精子は運動することができるとされています。

このミトコンドリアに問題が生じると精子にエネルギーが供給されなくなってしまうので精子の運動が悪くなると考えられています。
精子が運動をしないと卵子のもとまで精子がたどり着けないので不妊の原因となりえます。

この中間部のミトコンドリアについても、精子の運動にかかわる重要な要素になりますが、DNA同様通常の精子検査ではしらべられないことがおおくなっています。

尾部

尾部は前進運動を担う部分で精子はここの鞭毛を振動させ前進運動をおこなっています。

精子の形成について

精子は精巣で作られています。

精巣は白膜と呼ばれる膜で包まれていて(この白膜には神経が集中しているため衝撃を受けると激痛がはしります)その中に精細管とよばれる管が1000~本程度含まれていてここで精子が作られます。

健全な方であれば一日に5000万~一億個ほど作られます。
精巣には精子のもととなる精祖細胞があり、そこから70日ほどかけて作られます。
精巣で作られた精子はその後精巣上体、精管(40m)を通って移動し射精時に精漿(精嚢、前立腺の分泌液)と混ざり放出されます。

この過程があるので精子は作り始めてから放出されるまで計90日間(3ヶ月程度)かかります。
通常問題がなければ一度の射精時に精子が1億~4億個程度含まれているとされています。

精子の基準について

精液にはWHOの精液所見基準値というものがあります。これは簡単に言うとこれ位の数値があれば自然妊娠を期待してもいいよ、という目安の下限値です。

この基準値は
・  精液量 1,5mL以上
・総精子数 3900万以上
・精液濃度 1,500万以上/mL
・精子運動率 40%以上
・正常形態率 4%以上
となっています。あくまで目安ですのでこの値をこえているから必ず妊娠するというわけではありません。

ちなみに、
・精子運動率…全体の精子に対する運動している精子の割合です。運動の基準に関しては検査機関によって違いが生じることがります。
・正常形態率…正常な形をしている精子の割合でこちらも検査機関によって判断の基準が異なることがあります。

参考としてエス・セットクリニックでは、自然妊娠に必要なラインは
総精子数 5000万以上
運動率  50%以上
と考えています。

エスセットクリニックが考える+αの要素(精子の質)

通常の検査などでは精子の質、良し悪しは上記した精子所見(数、運動率、正常形態率)のみで判断されることが多いです。もちろんこの要素は精子の良し悪しを簡単に判断する手段としては有効といえます。

しかしエス・セットクリニックではこの要素にさらにDNA切断率、先体反応誘起率に注目して精子の質を考えます。

DNA

意外に感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが通常、精子の中にはDNAが切断ないし損傷している精子が含まれています。
一見して活発に動いている精子でもDNAが損傷または損傷途中の可能性があります。どの程度含まれているかはかなり個人差があります。

DNAが損傷している精子は受精率が低く流産率も高くなるため良い精子とはいえません。 顕微授精などの生殖補助医療をおこなう際はDNAが損傷している精子を使用してしまうとかなり不利に働く可能性があります。

先体反応

精子は卵に突入する際、精子の先体(頭の先)から卵細胞膜を破るために酵素を放出し、内部に侵入することで受精に至ります(先体反応)。
精子の中にはこの卵の膜を破る能力が不足しているものがあります。

これも個人差があり、人によっては先体反応のあるものが極端に少ない方もいます。

卵の膜を破れなければ当然受精をしませんので先体反応の悪さは自然妊娠の確率を下げまた人工授精、体外受精に対しても不利に働くと考えられます。

精子について知っておいてほしいこと

禁欲は3日程度が理想

男性は精子はためた方がいいと思いがちです。確かに禁欲期間を長くすれば精液の量は増えますが、古い精子が放出されないためその影響を受けて精子の質が下がってしまいます。
検査を受けたりするとき禁欲期間は長く取りすぎないでくださいと言われるのはこのためです。

複数回検査をする場合は禁欲期間を同じ位にしてあげると結果が比較しやすいと思います。

精子は作られ始めてから射精まで約90日間かかる

検査などをしたとき必ず『次回は3か月後に再び検査しましょう』『このサプリメントは3か月続けてください』といわれると思います。
これを聞いたとき『え、長い』と思う方は少なくないでしょう。
理由は精子は作られてから放出されるまで約90日かかるため、治療を始めてからその効果が現われるまで最低90日は必要だからです。

そのため3か月程度してから再び検査という形が多くなります。

個人差はあるが年齢とともに質は低下していく

女性は閉経してしまうと子供をつくれない、男性は歳をとってからでも子供を作れると思われている方が多いと思います。
確かに高齢の男性が子供を作ったという例はありますが、基本的に男性の精子も年齢とともに質が低下していき妊娠させる能力は落ちていきます。

精液は精漿と精子の混ざりものである

『自分は精液がちゃんと出ているから問題ない』と考えていませんか?
精液は精漿と精子の混ざりものであり精液に対して精子は1~2%しかありません。視覚的に精子が問題ない量含まれているかどうかはわかりません。

自身の精子について知りたいと考えるのであれば検査をしないとわかりません。