精巣から直接精子を回収する手術~TESE(テセ:精巣内精子採収術)~

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TESE(精巣内精子回収術)は精液中に精子が全く見られない無精子症、精子がほとんど見られない重症乏精子症、重度の射精障害の方に対して精巣の組織から直接精子を回収する手術です。
採取した組織を細切して顕微鏡下で精子の有無を確認し、精子が回収できれば凍結、あるいは顕微授精(ICSI)に用います。

特に無精子症の方にとっては子供を授かる可能性のある唯一の手段とされています。

TESEの種類

TESEには2種類の手術方法があります

simple-TESE(肉眼的精巣精子採収術)

陰嚢の皮膚を数cmほど切開し、次に白膜を切開します。そこから肉眼で精巣組織を採取します。
手術時間は30~60分程度とされています。精子回収の見込みが高い場合におこなわれる方法になります。

micro-TESE(顕微鏡下精巣精子採収術)

陰嚢の皮膚を3cmほど切開し、次に白膜を切開します。そこから手術用顕微鏡下に精巣内の精細管をくまなく検索し、精子が作られている可能性が高そうな太く白濁した精細管を何カ所か選んで採取します。
手術時間は1~2時間程度です

 

無精子症の種類

無精子症は精液中に精子が見つけられない状態のことをいいます。大きく分けて二種類にわけられます。

・閉塞性無精子症
精子は作られているものの精子の通り道が塞がっていることで精子が外に出てこれなくなってしまい、精液中に精子が見られなくなってしまう症状です。

・非閉塞性無精子症
精子を作る機能である造精機能がなにかしらの原因で低下してしまい、精液中に精子が見られなくなってしまう症状です。
精巣では精子が作られている場合と全く作られていない場合があります。

無精子症の詳細はこちらへ

精巣で精子が作られていればTESEで精子が採収できる可能性があります。

TESEをする前の無精子症に対する精索静脈瘤の治療

無精子症の方で重症の精索静脈瘤がある方は夫婦に時間的余裕があるのであれば、まず精索静脈瘤の治療をすることが推奨されます。
無精子症と診断された方でも精索静脈瘤を治療することで精液中に精子がみられるようになることがあるからです。精液中に精子がみられるようになれば顕微授精をおこなえる可能性があり、TESEを回避できることがあります。

TESEによる精子の採収は絶対ではなく、何度もおこなえるような手術ではないので無精子症だからすぐTESEといった選択肢はあまりおすすめしません。

また、精索静脈瘤を治療しても精液中に精子がみられるようにならなかった場合についても、TESEを行った際の精子の回収率が精索静脈瘤の治療をおこなった後の方が高いという報告があります。
そのため、精索静脈瘤が見つかった場合、精索静脈瘤の治療から進めていくことも有効な選択肢の一つになります。

TESEの適応

TESEは男性不妊となっている原因によって適応が異なってきます。

simple-TESE(肉眼的精巣精子採収術)

simple-TESEは閉塞性無精子症や重度の射精障害など、射精精液中に精子がみられないだけで造精機能に問題がなく、精巣で精子は十分に作られている可能性があり、精子回収の見込みが高いと診断された場合に適応となります。

micro-TESE(顕微鏡下精巣精子採収術)

非閉塞性無精子症や重症乏精子症のように、造精機能が著しく低下しているために精液中に精子がみられない場合に適応となります。
このような症状の場合、精子が作られていたとしても精巣の一部でしか作られていないことが多いため、顕微鏡下に精子がありそうな精細管をくまなく探す必要があります。
重要な事として精子が回収できるかどうかはTESEをおこなってみないとわかりません。

TESEまでの流れ

・無精子症の診断
一度無精子症と診断された方でも何度か精子検査をおこない精液を遠心処理することで精子が見つかる事もあります、また高熱が続いたといったことでたまたま無精子になってしまったということもあります。

そのため無精子症の診断は専門機関での検査を受けて確定診断をおこなうことが推奨されます。

・染色体検査
無精子症と診断された方がTESEを希望する場合、染色体検査を事前におこなうことが一般的です。検査自体は通常の血液検査同様採血のみになりますが検査結果がでるまで2週間ほど時間のかかる検査になります。

染色体検査とあわせてAZFといわれる染色体の一部分を詳細に見る検査をおこなうこともあります。

TESEの前におこなわれる染色体検査

基本的にTESEの前には染色体検査をおこないます。

染色体検査をおこなうことで事前に精子回収の見込みがあるかどうかがわかるからです。

・染色体検査
通常46XYとなっている染色体に異常がないかを検査します。
代表的な染色体異常として46XXYになっているクラインフェルター症候群があります。クラインフェルター症候群であると造精機能に大きな影響を与える事がわかっていますがTESEによる精子回収の見込みはあります。
染色体に異常があった場合、TESEで子供ができたとしても遺伝する可能性が非常に高いとされています。

AZF(Y染色体微小欠失解析)

染色体が46XYと正常であったとしてもY染色体に欠失(かけている部分)があると無精子症になること可能性があることがわかっています。
a,b領域に欠失が見られるとTESEによる精子回収のみこみはほとんどないとされています。C欠失の場合のみTESEによる精子の回収例があり採取の見込みがあるとされています。
C欠失で精子が回収でき顕微授精で子供を授かれたとしても、子供が男児の場合、欠失は遺伝され将来無精子症になってしまう可能性が高い事がわかっています。

そのためAZFに異常がある際にTESEをおこなうのであれば、事前にしっかりと医師から説明を受け夫婦で相談することが必要であると考えます。

TESEの費用

TESEは現在のところ健康保険の適応が受けられませんので自由診療(自費)になります。手術のみの費用であったり、精子の回収に成功した場合の精子凍結費用、運搬費用、保存費用を含んでいたりと様々です。
30~40万円のところが多いようです。