OAT症候群

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OAT症候群

ここでは代表的な男性不妊症について紹介していきます。

乏精子症、精子無力症、奇形精子症を総称してOAT症候群と呼びます。
傾向として1つだけ当てはまるというよりは、複数同時に診断されることがおおくなっています。

男性不妊のほとんどは精子についての問題になりますので、多くの男性不妊患者の方がどれかに当てはまるということになります。

乏精子症(ぼうせいししょう)

乏精子症は精液中に含まれる精子の数が少ない場合に疑われます。極端に精子の数が少ない場合には高度乏精子症と診断されます。

WHOの精子数1500/mlの値が目安になり、これよりも精子数が少ないと乏精子症と診断されることがあります。
健全な男性の精子の数は1億、2億ともいわれ、その中から選ばれたものが卵子の中に入り受精することになります。
精子の数が少ないからといって、妊娠不可能というわけではありませんが、やはり自然妊娠はなかなか難しいと判断されます。

そのため、乏精子症と診断された場合には治療をしていくことが必要ということになります。

ただし、精子の数はその日の体調などによって変動が激しいので、乏精子症の判断には複数回の検査が必要になります。

精子無力症

精子無力症とは精液中の精子の運動率が低い場合に診断されます。

WHOの精子の運動率40%未満(男性不妊引用)が基準とされていますが、運動率は検査機関によって判断方法が違う場合があるので気を付けてください(基準が違うからそこがいけないという話ではありません)
動いている精子がほとんどいない場合は精子死滅症といわれたりもします。

運動している精子が少ないと、膣内から侵入し、卵管膨大部までたどり着ける精子がほとんどいなくなってしまうため妊娠に大きな影響を与えます。

精子の運動率は精子の数とともに不妊に大きくかかわるものになります。
乏精子症同様変動が激しいため複数回の検査が必要です。

    

奇形精子症

精液中精子の正常形態率が低い場合に診断されます。正常形態率も運動率同様検査機関によって判断の基準が違うので確認が必要です。WHOの基準ですと正常形態率が4%未満だと奇形精子症と診断されます。

精子奇形症だからと言って、妊娠させることができないというわけではありません。
しかし、形に異常がある奇形精子はDNA情報に異常があったり、運動能力が低い物があり非常に受精しにくいといわれています。

OAT症候群の治療

OAT症候群には、様々な原因が考えられ、中には原因不明なものも多くみられます。

現在原因として明確なものの代表格として、精索静脈瘤があります。
精索静脈瘤が原因と考えられる場合は、精索静脈瘤のグレード、夫婦の状況により手術をするかサプリメント等で様子を見るかを選択します。

静脈瘤が改善した場合、全例とはいきませんが精子の所見がよくなる方も多くいらっしゃいます。

原因が不明である場合、漢方やサプリメントなどによる薬物療法、ホルモン療法などが多くおこなわれている対応方法になります。
精子は酸化ストレスに非常に弱いため、抗酸化作用のあるコエンザイムQ10やビタミンEなどを含むサプリメントが治療に有効とされています。
サプリメントの効果にはもちろん個人差がありますが、現在当クリニックにいらっしゃっている患者様の中にも、サプリメントを飲むことで精子所見が改善傾向にある方が多くいらっしゃっいます。

高度乏精子症と診断され、薬物療法などによる改善がみられない場合には、精巣から精子を直接回収する精巣内精子回収術(TESE)が検討されます。TESEにより精子を回収することができれば体外受精、顕微授精により子供を授かれる可能性があります。