
無精子症とは
無精子症とは精液の中に精子が一匹もいないことです。
原因別に、下記の2つのタイプに分けられます。
・閉塞性無精子症(Obstructive Azoospermia OA)
・非閉塞性無精子症(Non Obstructive Azoospermia NOA)
閉塞性無精子症とは、精巣で精子は作られているものの精路(精子の通り道)がなんらかの理由で閉鎖していることから精液中に精子が含まれていない無精子症です。
無精子症患者の15%程度が閉塞性無精子症といわれています。
非閉塞性無精子症は、精路には問題がないものの先天的または後天的理由で精子を作る機能が低下し無精子症になったものです。
非閉塞性無精子症の場合、精巣の一部で精子が作られているものの精子が精液に含まれていない状況、精子形成の途中で成熟が停止してしまっている状況、精巣で精子が全く作られていないことなどがあります。
無精子症患者の85%程度が非閉塞性無精子症といわれています。
無精子症の原因について
閉塞性無精子症の原因として考えられること
閉塞する場所は様々あり得ます。場所により考えられる原因は異なっていて
精管の閉鎖
・パイプカット
・幼少時の鼠径ヘルニア(手術の炎症や手術で精管を傷つけてしまうなど)
・先天性の精管欠損(生まれつき精管が細くなったり閉じている)
など
精巣上体部の閉鎖
・精巣上体炎の炎症
・Young症候群
など
射精管の閉鎖
などがあります。
閉塞性無精子症
精巣(睾丸)の中で精子は作られますが、途中の通り道が何らかの原因で閉塞を来していることから無精子症となったものを、閉塞性無精子症と呼びます。広義には射精できないことによる無精液症も含めることがあります。
非閉塞性無精子症
先天性(染色体異常、遺伝子異常、原因不明など)あるいは後天的(抗癌剤治療、放射線治療、ムンプス精巣炎など)原因により、精巣(睾丸)で精子を作る能力が低下してしまったために無精子症になったものを、非閉塞性無精子症と呼びます。広義には時々ごく少数精子が精液中にあらわれる症例を含めることがあります。
非閉塞性無精子症
非閉塞性無精子症においては現在突発性(後天性)のものの多くは原因不明です。
先天性のものや後天性で原因の判明しているものには
・染色体異常(クラインフェルター症候群など)
・遺伝子異常
・抗がん剤治療
・放射線治療
・ムンプス精巣炎
などがあります。
無精子症の検査及び診断について
閉塞性無精子症か非閉塞性無精子症かについては、泌尿器科医師の診察と血液検査によって鑑別することが可能です。
1)精巣の触診、超音波検査
2)血液検査(ホルモン検査)
3)染色体検査
上記3つの検査結果をもとに、男性不妊を専門とする医師が診断し、おおよそ区別することができます。
閉塞性無精子症 | 非閉塞性無精子症 | |
症状 | 精子は作れている。精管が閉塞している。 | 精子が作れていない |
睾丸 | 大きさ、硬さは正常 | 萎縮している(8cc未満)・やわらかい |
精巣上体 | 腫大あり | 膨大なし |
ホルモン値(FSH) | 正常 | 10以上 |
無精子症の治療(対処法)について
治療法は同じ無精子症であっても大きく異なります。
・閉塞性無精子症
閉塞性無精子症への対応は大きく分けて二つあり
・精路の再建、開通
・精子回収術
になります。
精路の再建、開通を行う場合
閉塞性無精子症の場合、精路が閉塞していることで精子がでてきていません。
精巣では精子が作られていると考えられますので、精路を開通または再建すれば精液中に精子が出現することが期待できます。
精液中に精子が出現すれば自然妊娠が期待できる、顕微授精ではなく人工授精が行えるなどの大きいメリットが存在します。
ただし、開通してもすべての方に精子が出現するわけではなく、出現しても自然妊娠を期待するのが難しい数であることもあります。
閉塞性無精子症であれば誰でも再建を行うわけではなく、夫婦の年齢であったり、事前に再建術の積極的な適応ではないと判断できる時などには精子回収術が検討されます。
精子回収術
精路再建が困難な場合や夫婦の判断で顕微授精を行う場合などに用いられる方法で
閉塞性無精子症に対しては
・精巣上体精子回収法(MESA)
・精巣内精子回収術(TESE又はsimple-TESE)
などが回収術として用いられます。
閉塞性無精子症であればこの術式でほぼ確実に精子が回収出来ます。
・非閉塞性無精子症
非閉塞性無精子症の場合、多くのケースで
・顕微鏡下精巣精子採取(microdissection TESE、MD-TESE)
により精子を回収することが試みられます。
非閉塞性無精子症では一部でしか精子が作られていないため顕微鏡をもちいて精子がある可能性が高そうな精管を採取します。
閉塞性無精子症と比較すると回収率は低くなっていますが、以前であれば治療不可能であったことを考えれば高い数値であり現在無精子症に対する治療の主流となっています。
回収の可能性が0%の場合のみ事前の染色体検査(AZFa又はb欠失)でわかります。